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第5話 クリスマスデート

Auteur: スナオ
last update Date de publication: 2025-06-18 07:57:27

 婚姻届を僕に書かせたのは、僕が大学で浮気をしないようにさせるためのけん制の目的があることをのちに僕は知り、彼女の大学でのけん制はすさまじいものがあった。結婚式はお互い夢をかなえてからでいいといってくれたが、結婚指輪を(主に僕が)することにひまわりはこだわった。とはいえ、入学金や2人で暮らす部屋の入居にかかるお金、家具・家電などを揃えていては指輪どころではなかった。だからこそ入学してから半年間、僕はアルバイトに精を出した。安物でも彼女に指輪と想いを届けるために。

 クリスマスイブの日、僕らはデートに出かけた。目的地は遊園地、ダッフルコートを着たひまわりはうれしそうに僕の腕にしがみついている。

「いやあ、遊園地に行くのなんて初めてだよー」

「島には遊園地はないものな」

「あー、いまバカにしたでしょ」

「してないしてない」

 僕は苦笑いを浮かべる。

「でも遊園地の定番は知っているわよ。ジェットコースター!」

「いきない絶叫系。大丈夫なの?」

「波が激しいときの船に比べればましでしょ? ほら、いこ」

 ひまわりがしがみついている腕をひっぱりジェットコースターの列に向かう。僕は微笑みながらそれに続いた。

◆◆◆

僕たちはジェットコースターに乗り込み、腹の底から叫んだ。

「ひゃあああああ!」

「うわああああああっ」

ジェットコースターから降りた僕は三半規管がグルグルするのを感じながら、ひまわりに尋ねた。

「大丈夫だった?」

「うん! 楽しかった!」

 それは良かったと思いつつも、次はコーヒーカップに乗りたいとひまわりが言い出したため、さすがに連続で三半規管を攻撃されるのはつらいとどうにか止めるのだった。

「んー、じゃああれは?」

 ひまわりが指さしたのはメリーゴーランドだった。

◆◆◆

「なあ、ひまわり」

「なあに、太陽」

「メリーゴーランドってこんな乗り方するものだっけ」

「さあ、でも太陽がやっていたゲームではこうしてなかったっけ」

「うっ」

 そう言われると反論できない。今僕は、ひまわりが乗っているメリーゴーランドに2人乗りしている。前に乗った彼女を抱きしめるような形でのタンデム乗馬だ。はずかしい……けれど彼女のあたたかさが心地よかった。

「あったかいね。太陽」

「うん」

◆◆◆

 そうしていろいろなアトラクションを楽しんだあと……夕方の定番である観覧車に乗った。ひまわりは高いところから見る都会の街並みに目を輝かせていた。僕はポケットの中の箱を握り、決心する。

「ひまわり……」

「なあにー」

 ひまわりは景色を見つめたまま返事をする。

「ちょっとこっち向いて」

「ん」

僕はこちらを向いたひまわりに箱を開けて指輪を見せた。

「遅くなっちゃったけど、これからも僕とずっと一緒にいてください」

「うん……」

 ひまわりは少し涙ぐみながら、笑った。僕はそんな彼女の左手の薬指にそっと指輪を通す。

「きれい」

 彼女は小さなペリドットが輝く指輪を眺める。ペリドットは8月生まれの彼女の誕生石で、石言葉は「夫婦の幸福」だ。これしかないと思って用意した。

「ぐす、ありがとう。太陽の分もあるんだよね?」

「う、うん?」

「貸して」

手を伸ばしてくるひまわりに、僕の分が入った箱を渡した。ひまわりは箱を開けておそろいの指輪を取り出すと、僕の左手の薬指にはめた。

「浮気しちゃだめだからね」

「わかってる」

 僕たちは微笑み合うと、どちらからともなく唇を重ねた。10年以上の付き合いだったが、キスをするのは初めてだった。遅すぎるファーストキス。夕陽だけが僕らを見ていた。

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